今回は近世の壁画について書きたいと思います。
中世末期から近世初期(ルネサンス期)になるとテンペラ技法が多く用いられるようになります。(テンペラは水性絵具全般を指すので、存在自体は古代からありました。)
また、この頃、フランドル(現在のオランダ、ベルギー、フランスの一部)で油絵の基本技術が完成し、絵画にも応用されるようになります。そして以後長きにわたり、メジャーな絵画材料として君臨し続けます。
今回は当時、ルネサンス期に壁画にもよく用いられたテンペラ技法について書きたいと思います。
テンペラの材料と種類
テンペラは「かきまぜる」を意味する言葉で、古代においては「絵具」を意味したようで、水性絵具の総称であるようです。
バインダー(のり)の種類の数だけ、テンペラの種類があるようで、アラビアゴムを用いたガムテンペラ、膠の膠テンペラ、カゼイン(牛乳の凝固成分)のミルクテンペラ、鶏卵の卵テンペラ、鶏卵+乾性油、樹脂の卵エマルジョンテンペラ等々様々な種類がありました。
支持体(画面に使われるもの)にはパピルスや羊皮紙、紙、板(イタリアやスペインではポプラ材が、フランドルなどの北欧ではオーク材が使われました。)、布が使われました。
これらに、膠水で溶いた石膏や白亜などの吸収性の下地を塗って、絵を描いたようです。
テンペラ技法の用途
歴史上のテンペラ画
歴史上有名なテンペラの壁画といえばやはり、ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」でしょうね。
「キリスト教の時代」であった中世が終わり、中世では描かれ得なかった、ギリシャ(異教)の女神ヴィーナス(しかも裸像)が描かれています。
人間の罪深さと神の絶対性を強調したヘブライズム(キリスト教的人間観もこれに含む)が力を持った中世が終わり、人間の理性、可能性を積極的に認めるヘレニズム(古代ギリシアの人間観)がルネサンス期、力を持ち始めましたが、この作品も当時の世相を反映しているわけですね。
まとめ
昔の技法であるテンペラもまた、私が使うアクリル絵の具などとは異なり、厳格な処方箋があったようですね。
私も美大受験予備校にいた頃、テンペラの授業がありました。皆で生の卵をっ使うため、教室には卵入りのビンでいっぱいの冷蔵庫がありましたね。
冷蔵庫がなかった当時は、買っている鶏が1日1つ産む卵を使ってその日使う絵具を作っていたようです。大変ですねー。
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